VWバスとは?
偉大なビートルの弟、タイプⅡも人気者
ここで紹介するワンボックス型ワゴンは、フォルクスワーゲン(以下:VW)バスとかタイプⅡとかいった呼称で呼ばれる愛好家に人気のモデルです。
タイプⅡの説明には、それ以前のVWタイプⅠに触れなければなりません。タイプⅠとかタイプⅡという呼び方は、VW車の型式表記で、タイプⅠはVW社の初の小型乗用車を示す「1型」とでもいう意味です。
タイプⅠは、かのドイツが誇る自動車設計者であるフェルディナンド・ポルシェ博士が第2次世界大戦以前に設計した小型車です。戦後の1945年から西ドイツのウォルフスブルグVW本社工場で本格生産が開始され、“ビートル”の愛称で世界的に愛された、あのクルマのことです。
タイプⅠの最大の特徴はリアエンジン・リアドライブ(RR)方式のレイアウトと空冷式水平対向4気筒OHVエンジンの採用でした。さらにプラットフォームを構成するメカニズムは、戦前の設計とは思えない先進性に溢れていました。この先進的なプラットフォームは、たいへんに柔軟性に富んでいたことも特徴で、さまざまな派生車種を生み出していくのです。
ここで本題の1950年に登場したタイプⅡです。タイプⅡは派生車種の一典型で、「1型」から派生したワンボックス型の小型乗用車&商用車です。要するに、ビートルのプラットフォームにワンボックスワゴンのボディを載せたコンパクトな多人数乗車カー(今で言うなら小型ミニバン)です。
当時、こんなコトが出来た理由は、このタイプⅠのシャシーが低床でフラットだったからとされています。確かに空冷水平対向4気筒エンジンは“フラット4”と呼ばれるほど天地寸法が小さく、床下に収まるほどスペースユーティリティに優れていたのです。
1950年に発表されたタイプⅡのエンジンは排気量1200ccで最高出力はわずか25psしかありませんでした。最高速度はビートル(タイプⅠ)の100km/hに及ばない90km/hだったそうです。
しかし、発売されると小さくても、その汎用性の高さが欧州各国の市場で評価されました。ヒットの理由は幾つか考えられますが、そのファニーな容姿は大きな要素だったことは間違いないでしょう。
すぐに世界各国へ輸出され、アメリカでもヒット作となりました。そのアメリカでは60年代に比較的低廉なその中古車を若者たちが購入し、キャンパーや小型バスなどに改造し、反体制ヒッピームーブメントの象徴となったのです。日本には1953年からヤナセを通じて輸入されました。
ドイツ・ウォルフスブルグの工場では1967年に生産を終えましたが、ブラジルのVW工場では1975年まで生産されていました。ちなみに、タイプⅠのドイツでの生産は1978年に終了しましたが、メキシコ工場での生産は2003年まで続けられました。メキシコ生産の現行VWビートルも2010年一杯で生産が終了します。